つまりは単純な話

Thanks for：hazy

願いごとシリーズ。スザルル。


お正月のスザルル編。
元日の話です。三箇日過ぎたけど（以下略）

さりげなくクリスマス（僕、明日もう目が覚めなくてもいいや）と話が繋がっています。
読んでない方はを先にそちらをお読み下さい～。

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そのときの彼の顔は、まさに見ものだった。


「何をそんな惚けているんだ、スザク。明けましておめでとう」
「え、あ、うん。あけましておめでとう・・・？」


起き抜け早々、目をぱちくりとさせながらテーブルの上に広がるお節料理を凝視するスザクの姿に、ルルーシュは悪戯を成功させた子供のような心地で唇の端を吊り上げる。これだけの反応を見せてくれるなら、この日のために色々と準備した甲斐があったというものだ。精霊であるルルーシュが、人間界の――ましてや日本という小さな島国における正月などという行事を知っているはずもなく、偶然買い物途中で遭遇したリヴァルに「正月はどうすんだ～？」と問われなかったら、なんの用意もなく年明けを迎えるところだった。


『どうせスザクのことだから正月もバイト尽くしなんだろーけど』


そう言って苦笑したリヴァルの予想は、おそらく間違っていなかった。稼ぎ時であるクリスマスを風邪で駄目にしてしまったスザクは、その分を取り返すかのごとく働いていた。馬車馬のように、なんていう表現は生温い。大学が冬期休暇に入ったのをいいことに、朝から朝まで――決して語弊ではなく、本当に早朝まで働いていたのだ――バイト三昧の生活。平均睡眠時間は2～3時間で、しかもそれだってルルーシュが無理矢理取らせたものだ。本人にいたっては「30分仮眠取れば充分だよ！」と胸を張っていた。・・・本当にありえない。

常々思うことだが、スザクは絶対に働きすぎだ。確かにこのマンションの家賃や光熱費等は安いものではないだろう。普段は大学生活を主軸に置いているから、長期休みなどを利用して集中的にお金を貯めておきたい気持ちもわかる。・・・が、それで体を壊しては元も子もないだろう。リヴァルの話を聞いたルルーシュが、せめて正月ぐらいはしっかり休んでほしい、と考えるのだって当然といえよう。


『・・・リヴァル、少々頼みがあるんだが』


しかも、ルルーシュの目の前にはそれを現実にするための手段があったのである。使わないわけがない。


「・・・急にバイト先から『元日ぐらいは休め』なんて言われたからおかしいとは思ってたけど・・・ルルーシュ、リヴァルを使って裏から手を回したね？」


ようやく頭が働き始めたらしいスザクは、バツが悪そうに顔を顰めながら、寝癖の残る髪に指を差し入れ、ぐしゃぐしゃっと掻き混ぜた。


「お前は無茶しすぎなんだよ。年明け最初の日ぐらいは休んだってバチは当たらないだろう？」
「そうは言ってもなぁ・・・。クリスマスには色んな人に迷惑をかけちゃったし」
「だーっ、俺が休めと言っているんだから休め！　これは俺からのお年玉だっ。大人しく受け取って貰うぞ！」
「・・・へっ？　お年玉？」


ぽかんとするスザクの顔をぎろりと睨み付け、文句があるなら言ってみろ、と低く問いかける。スザクは「文句なんて・・・！」とぱたぱた手を振りながら、戸惑ったように頬を掻いて、言った。


「ただ・・・お年玉なんて、十数年貰ってなかったからさ。まさか、大学生になって貰えるなんて思ってもみなかったし」


そうして、困ったように苦笑するから、ルルーシュは一瞬言葉に詰まり、それから小さな声で「・・・馬鹿が」と悪態吐いた。ルルーシュには、普通の正月なんてわからない。真似るようにお節料理は作れても、本当の意味で日本の正月というものを祝えているかは微妙なところである。だけど、それでもルルーシュは、祝いたいと思うのだ。微笑む彼の瞳が寂しげに揺らめいている限り、力を尽くしてそれを和らげたいと願ってしまう。


「えっと、さ・・・ルルーシュ」
「・・・なんだ？」


穏やかな声に促されて顔を上げると、スザクはどこかはにかむように笑っていて。


「去年はありがとう。それから、今年もよろしく」
「――あぁ。こちらこそ、よろしくな」


その翡翠の瞳が嬉しそうに煌くから。なんの根拠がなくともそれだけで、今年はきっといい年になるだろう、とルルーシュは思えた。


――――――
どうしても「今年もよろしく」で締めたくなるお正月（笑）
ルルスザもそれで締めちゃったからできればオチは変えたかったんだけどなぁ・・・。

くっついているんだかくっついてないんだかわからない感じのスザルルですみませ・・・っ。