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コードギアスのルルーシュとスザクにひたすら愛を捧げているテキストブログ


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Thanks for:hazy

願いごとシリーズ。スザルル。


スザクの自覚編。
まぁ、早いところこのふたりの関係を進めたかっただけですよ(笑)





「スザクさん、最近どうなのですか?」


温度のない声が、自分に問いかける。・・・本当に、これが自分の叔母なのだろうか。会うたびに頭を過ぎる疑問から目を逸らし、スザクはぎこちなく苦笑してみせた。1ヶ月に1回ほどのペースで訪れることになっているこの叔母は、現在のスザクの後見人だ。引き取ってくれたのは中学3年の終わりで、高校入学と共にスザクは家を出てしまったから、一緒に暮らしたのは2ヶ月もなかったが。――逆を言えば、そのおかげでこの叔母は未だに自分の後見人でいてくれるのかもしれない。


「くだらないアルバイトにかまけて、学生の本分である学業を疎かになんてしていませんでしょうね?」


彼女曰く、くだらないアルバイトが、スザクの生活には必要不可欠なのだと、なぜわからないのか。・・・ひょっとして、叔母は未だに、両親の遺産がまだスザクの手元に残っていると信じているのだろうか。莫大といって差し支えないほどあったはずの遺産は、親戚間をたらい回しにされているうちにほとんど奪われてしまって、スザクの手元には雀の涙ほども残っていないというのに。


「学費はこちらが出しているということをお忘れなく」


声と同じ、温度のない眼差しがスザクを見る。スザクは「はい、わかっています」と、ただ静かに頷いた。自分は大学に進学するつもりなどなかった、とは言わない。成長して、言葉を飲み込む技術ばかり上手くなってしまった気がする。そんなことをぼんやりと考えながら、叔母の話の半分を聞き流して、そうしてようやく、スザクはその家を後にした。


(・・・気持ち悪い)


胃が重たくて、なんでもいいから嘔吐してしまいたい。もちろん、そんなことできるわけもないので、スザクは代わりにせっせと足を進めるだけだ。叔母の家で夕食にも誘われたが、それは丁重にお断りした。あの家で食事をしても、それこそ帰宅した瞬間嘔吐してしまうだろう。・・・あぁ、そうだ。帰ったらもう今日は寝てしまおう。一食ぐらい抜いてしまっても問題はないはずだ。――いや、問題ならあった。


(そうだ、ルルーシュがいる・・・)


スザクの体のことをなにかと気にかけてくれる彼のことだ。夕食も取らずに自室に閉じこもったりすれば心配するに決まっている。それはスザクの本意ではないが、かといって今の状態ではいつものように「ありがとう」と言って彼の用意してくれた料理を食べられるとも思えない。


(・・・仕様がない。頭を冷やしてから帰ろう)


マンション近くの公園へとふらりと足を向けて、ベンチの上に腰を下ろす。そのままころん、と横になりながら、人気のない公園をぼんやりと眺めた。日中は賑わっている公園も、夜になってしまえば静かなものだ。静寂に身を任すようにして目を閉じ、スザクはまどろむように意識を手放す。――そして、目が覚めると、時刻は午前2時を回っていた。


「・・・・・・え?」


さすがのスザクも、これには言葉を失った。いったい何時間寝ていたのか。というか、こんなところで寝ていてよく見咎められなかったものだ。様々なことが頭の中をぐるぐると巡り、スザクはとりあえず立ち上がった。公園のベンチなんていう、本来睡眠には適さない場所で寝た所為か、体の節々が痛い。強張った筋肉を軽く解しながら、少しだけすっきりした頭に同居人の姿を思い描く。彼はもう休んでいるだろう。顔を合わせずに済んだことには正直ほっとしたが、起こさないよう静かに帰らなければ。静かに、静かに・・・と呪文のように胸中で繰り返しながら部屋の扉を開けた瞬間。


「――遅い」


不機嫌な声が、スザクの帰宅を出迎えた。尊大な態度で腕を組み、綺麗な眉をきゅうっと逆立てながら、その至高の宝玉のような紫色の瞳でスザクを見下ろしているのは、紛れもない同居人――ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアその人であった。


「・・・え?」
「遅い、と言ったんだ。今、何時だと思っている?」
「・・・2時過ぎ・・・?」
「わかっているなら何故連絡の一本も寄越さない!?」
「・・・ごめん・・・」


怒鳴りつけるルルーシュに、スザクはいまいち状況が飲み込めないままに謝罪する。そんなスザクに、ルルーシュがなにを思ったかはわからない。・・・いや、正確にはそこまで頭を働かせるのが億劫だった。ただ、彼は少し困ったように、あるいは呆れたように溜め息を洩らした。


「頼むから、遅くなるときは連絡ぐらいしてくれ。心配するだろう」
「――え?」
「なんだ、その間の抜けた顔は。一緒に暮らしている相手を心配して何が悪い?」
「あ、いや、悪くは、ないんだけど・・・」

(心配する、なんて、言われたの何年ぶりだろう・・・)


未だ胃に残っていた重りの名残が、すうっと溶けていく。ふっと詰めていた息を吐き出したスザクに、ルルーシュは「それと、言い忘れていたんだが・・・」といささかバツが悪そうに口を開いた。


「おかえり、スザク」


その、体温のある声と和んだ優しい目許に、スザクは無意識に手を伸ばし。


「・・・おい?」
「ごめん、ちょっと充電中」
「何を充電するつもりだ、お前は」


仕様がないやつだな、と苦笑する気配がする。思わず抱き締めてしまった華奢な体に身を預けて、スザクはその肩口にそっと顔を埋めた。――あぁ、どうしよう。


(君に、惚れてしまいそうだよ、ルルーシュ)


――――――
「惚れてしまいそう」とか思ってるけど多分手遅れな枢木さん。
人が誰かに惚れる瞬間ってどんなんだろう、とそういうシーンを書くときいつも思います。

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