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コードギアスのルルーシュとスザクにひたすら愛を捧げているテキストブログ


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Thanks for:ユグドラシル

神殺しシリーズ。ルルスザ。


前回の続きっぽい話。
今度はシャーリーとスザクの会話。




シャーリーは泣いた。泣いて泣いて、それからただひたすらに歩いた。・・・ルルーシュは、あとを追って来なかった。それを寂しく思わないわけでもなかったけれど、変に期待を持たされるよりはずっといい。もしかしたら、彼はそんなシャーリーの状態を知った上で、追わないでいてくれたのかもしれない。だからシャーリーは、そんな彼に甘えて、失恋の痛みに酔って、ただひたすらに足を動かした。それまで誰にも会わなかったという強みもあったし、何よりも周りを意識している余裕もなかったから。――だけど、そうして周囲への注意を怠ったことを、シャーリーはすぐさま後悔する羽目になる。


「わっ」


廊下の角を曲がった瞬間、さほど強くはないが、不意打ちには辛い程度の衝撃が体を襲い、あ、倒れる、と思った直後、腕を掴まれた。力強い手が、優しく、でもしっかりとシャーリーの体のバランスを保つ。転倒を免れた自分の体を、シャーリーは他人事のように見下ろし、頭上から降ってきた「大丈夫?」という声に、ゆっくりと主観が戻ってくるのを感じた。・・・そうだ、助けて貰ったんだから、お礼を言わなくちゃ。その穏やかな声に、シャーリーの中の何かが小さな警告音を発する。だけど、そのときの自分は、延々と流し続けた涙の所為か、頭がうまく働かなくて。穏やかな声もぼんやりと聞き覚えがあるような、ぐらいにしか思わなくて・・・。だから、なんの心構えもなく、シャーリーは顔を上げてしまった。――その視界に、翡翠色の双眸が驚きに見開かれていくさまをはっきりと収め、あぁ・・・、とどこか絶望したように胸中で嘆く。


「シャー、リー・・・? どっ、どうしたのっ?」


ぽかん、とした顔でシャーリーの名前を呟いたその穏やかな声の持ち主は、すぐに慌てたように言葉を繋げた。心配を絵に描いたようなおろおろとした表情を直視できない。だって、彼は――枢木スザクという名の優しい友人は、シャーリーが今もっとも会いたくない人物だったのだから。彼の視線から逃げるように、シャーリーはぺたりと廊下に座り込んだ。そんな自分を追うように、すかさず傍らに膝を折ったスザクが、労わるようにシャーリーへと手を伸ばす。その指先が髪に触れるか否かのところで、「――わたし」シャーリーは唇を開いた。


「わたし、スザクくんなんて嫌いよ」


その言葉だけで、彼の動きは凍った。伸ばされた指先も、呼吸さえも止めてしまったかのようにスザクは動かず、シャーリーはようやくゆっくりと顔を上げた。その動きに感化されるようにスザクはゆっくりと息を吐き出すと、シャーリーへと伸ばした手を下ろし、ただ、静かに微笑みを浮かべた。傷付いたように哀しげに。諦めたように儚げに。煌く翡翠の瞳を細め、困ったように眉を垂れ下げながら、唇だけは優しく弧を描く。


(・・・ずるい)


スザクは、ずるい。そんな顔をされたら、嫌いたくても嫌えないじゃないか。シャーリーはスザクを嫌ってしまいたいのに。恋する少女の身勝手さで、彼を悪者にして悲劇に浸りたいのに。そうやって彼は笑ってしまうから。シャーリーの被害者ぶった心を、優しく受け止めようとしてくれるから。だから、シャーリーは彼を嫌えない。スザクはどこまでも、シャーリーの大切な友人で居続ける。


「・・・ルルに、振られちゃった」
「――え?」
「告白したらね、『すまない』って返されちゃったの。私のことは、大事な友人だと思ってる、って」
「そ、う・・・」


戸惑ったように相槌を打つスザクの、逸らされた横顔を見つめ、シャーリーはさきほど自分に触れるはずだった指先にそっと手を伸ばした。それに気付いて、さり気なさを装って身を引こうとするスザクよりも早く、その指先を手で包み込んでしまえば、フェミニストの気がある彼はそれを振り払うことはできない。困ったように、彼はその指を見つめ、やがて助けを求めるようにシャーリーの顔へと視線を上げる。ようやく交わった翡翠の眼差しに、シャーリーはでき得る限り優しく微笑んで、言った。


「だからね、さっきのは取り消し。――ごめんね。私、スザクくんに八つ当たりしちゃった」
「さっきの、って・・・」
「私、スザクくんのこと嫌いじゃないよ」


だけど、好きだなんて言ってはあげない。ルルーシュに対する想いとスザクに対する想いは違うけれど、それでも同じ言葉で表せる感情ならば、その二文字は恋心に対してのみに使いたかった。――だから、好きだとは言ってあげない。代わりに、握り締めた指先から、この優しい気持ちが通じればいいと願った。


「大切な友達だもん。嫌いになれるわけないじゃない」


嫌いじゃない。嫌えるわけない。ただひたすらに、祈るようにそう続けたのは、包み込んだスザクの指先が、シャーリーの体温を拒絶するかのように冷たかったからだ。


――――――
シャーリーは友愛としてスザクのことがちゃんと好きです。
・・・そういうところをきちんと描写できていればいいなぁ、と思います。

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