忍者ブログ
コードギアスのルルーシュとスザクにひたすら愛を捧げているテキストブログ


×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

Thanks for:選択式御題

Dear daysシリーズ。ルルスザ。


マリアンヌとスザクの会話。
引き取られて一週間ぐらい。


それとは別ですが、木曜は出かけてしまって倉庫更新できませんでした。
来週まとめてupしますね!




この庭園は、薔薇の匂いがした。日本にいた頃のスザクにはあまり馴染みのない香りだ。だが、この匂いを嗅ぐと、スザクは決まって日本に置いてきた両親の墓を思い出す。スザクが作ったその墓の下に、両親は眠っていない。ふたりの亡骸は、スザクの元には戻って来なかったから。敗戦国トップだからどうとか、説明を受けたけれど、あまりよく理解できなかった。ただ、自分はふたりの亡骸を埋葬してやれないのか、とそれだけをぼんやりと考えた。そういえば、父の自害は有名だが、母の自害はあまり外に洩れていないようだったから、もしかしたら母のほうに至っては死んでいる事実を隠したかったのかもしれない。――どちらにしても、そんなことは自分の知るところではない。ただ、埋葬できない代わりにスザクがふたりにできたことは、枢木家の庭に墓を作ることだけだったのである。たとえそれが、父の懐中時計と母の髪飾りを埋めて、その上に手ごろな石を乗せただけの代物であったとしても、スザクにとっては両親の墓に違いなかった。


「せっかくふたりでお茶を飲んでいるのに、考えごとなんてひどいわねぇ」


揶揄するように言って、スザクに薔薇の香りと両親の墓とを連想させるようにした張本人は、くすくすと笑った。もっとも、彼女にその気があったかどうかは定かではない。だが、周囲には内緒で日本までやってきていたらしいこの皇妃様は、スザクの作った両親の墓に薔薇を供えたのである。墓に供えるには相応しくない華美な薔薇だった。びっくりして振り返ったスザクの視線の先で、太陽を背負ったマリアンヌは「手向けの花ぐらい、豪華でもいいでしょう?」と笑った。彼女の後ろにある太陽が眩しくて目を細めて、鼻腔を満たす薔薇の香りに眩暈がした。――それ以来、薔薇の香りはスザクに両親の墓を思い出させる。


「えーと・・・ごめんなさい?」
「まぁ、今回は私が強引に誘ったことだから大目に見てあげるけれど、あまり女性を退屈にさせては駄目よ?」
「は、はいっ」
「いいお返事。――それで、ルルーシュとは上手くやってるの?」


紅茶に口付けながら、そういえばそんな話をしていたんだった、とスザクは少しだけ気まずく思う。庭に満ちた薔薇の香りに意識が過去へと飛んでいた。殊更ゆっくりと紅茶を飲み、スザクはカップを弄ぶように両手で握って、口を開く。


「どうって、言われても・・・殿下は僕なんて嫌いだと思いますよ?」


ことり、と首を傾げて言えば、「あらあら困った子ねぇ」とマリアンヌは溜め息混じりに笑う。・・・ひょっとして今、自分はルルーシュにとって都合の悪いことを言ってしまったのでは? はたとその事実に行き着き、スザクは慌てた。確かに嫌われてはいるようだけど、いじめられているわけでは決してないのだ。


「で、でもとってもよくしてくれます! ご飯も美味しいですしっ、部屋だって・・・!」
「そういうことじゃないのよ」
「・・・?」
「そういう表面的な世話をさせるために、あなたをあの子に預けたわけではないの」


だったら何故――とは、問えなかった。思慮深い瞳がスザクを見つめ、そっと細められる。ただ、それだけの動作で、彼女はスザクからその言葉を奪ってしまったのだ。居心地の悪さを紛らわせるように、投げ出された足をぶらつかせる。座っていた椅子は、まだ7歳のスザクには少々高すぎて、だから、あまり褒められた行為ではないと知っていても、手持ち無沙汰になるとつい地面から離れている足を揺らしてしまう。それでも今回はすぐに気付いてやめたのだが、一連の動きはしっかりと目の前の女性に見られていたらしい。おかしそうに笑いながら、マリアンヌはスザクの頭を撫でた。ふわりと香る、薔薇の匂い。


「ルルーシュにはもう少しヒントをあげなくちゃ駄目かしらね」
「・・・ひんと?」
「えぇ、ヒントよ。ルルーシュと仲良くしてやってね、スザク」
「・・・うん。――じゃなくてっ、はい!」
「ふふっ、別に『うん』でもよかったのに」


悪戯っぽく笑われて、スザクは顔を赤くした。今のは完全なるスザクの失態だ。敬語を忘れるなど、ここへ連れてこられてからは一度だってなかったのに。難しい言葉は、ルルーシュに使おうとして失敗して以来、駆使すること自体諦めてしまったが、それでも最低限のレベルは保とうとしていただけに、これは決まりが悪すぎる。ただ、もしも先ほどのマリアンヌの微笑みが、皇妃としてのロイヤルスマイルだったなら、スザクはきちんと「はい」と答えられていただろう、とは思う。あのときの微笑みが、ただの母親としての顔だったから。いつもは凛としていたスザクの母も、ふたりきりのときは同じ表情で微笑んでくれていたから。気が緩んでしまったのは、きっとその所為だ。薔薇の香りは両親の墓を思い出させて、スザクを思い出の中に引き摺り込もうとする。――それでは駄目なのに。


(しっかりしなくちゃ・・・)


考えるべきは今なのだ。過去ではない。・・・そうやって自らに言い聞かせることで、無愛想な身元引受人の、端整に整った顔を頭に思い描き、スザクはほっと息を吐いた。――ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。仲良くなれるかどうかは正直わからないけれど、彼が今のスザクに最も近い相手であることに間違いはない。日本にいた頃の自分を知らない彼が、目の前にいるマリアンヌよりもずっと、スザクの望む今の自分に近いところにいるのだ。


――――――
マリアンヌ様の性格が未だに掴めません。
もういいですよね、捏造でも!(開き直り)

拍手

PR
この記事にコメントする
Name :
Comment :
 


material by アルフェッカ

忍者ブログ | [PR]
 
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
カウンター
メールフォーム
最新CM
[10/22 sora]
[05/13 悠]
[03/01 音音]
[10/16 朝倉斐滝(管理人)]
[10/15 NONAME]
ブログ内検索
最新TB
プロフィール
HN:
朝倉斐滝
性別:
女性
バーコード