ねぇ愛は 此処にあります

Thanks for：選択式御題


わたしの執事、ぼくのお嬢様シリーズ。スザルル♀。


メリークリスマスでスザルル！
宣言どおり、「貫ぬく残酷」の続きです。

散々双子達に責められたスザクが、クリスマスにルルーシュへ贈ったものは・・・？

このシリーズにしては珍しく甘いほうではないかと思います。
・・・あくまでもこのシリーズにしては、ですが（笑）


先週中には上げるつもりだったのに・・・（めそめそ）

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先日贈った恋人への誕生日プレゼントは、彼女自身よりもむしろその妹からすこぶる評判が悪かった。まぁ、半分ぐらいは予想済みだったので、それに関しては最早言い訳のしようがないのだが、そのおかげで「クリスマスは気合入れて下さいね」と大きな課題を突きつけられたことには、苦笑するほかないとスザクは思う。


『クリスマスはちゃんとしたものを贈って下さい。さもないと――すごいことしますよ？』


そう言ってにっこりと微笑んだときのナナリーの顔は本気だった。その隣で同じように微笑むロロからは多少の同情も窺えたが、それでもナナリーとほぼ同意見だと思っていいだろう。すごいことってなにをする気なんだろう。そのときのことを思い出しながら、スザクは審判とも言える双子の監視のもと、恋人の前に立った。


「メリークリスマス、ルルーシュ。これ、僕からのクリスマスプレゼント」


紫色の小瓶に、レースのリボンを添えて。そっと持ち上げたルルーシュの手の平にそれを乗せれば、彼女は少しだけきょとんとしてスザクを見上げる。


「香水・・・？」
「うん。一応、ルルーシュをイメージして作ってみたんだけど」
「手作りなのか！？」
「今日びのアロマブームのおかげで材料はわりと簡単に手に入るからね」


零れ落ちてしまうんじゃないかと危惧するほど目を見開く彼女に、スザクは軽く肩を竦めて言った。最初は市販のもので済ませようと考えていたものを、ふと芽生えてしまったある自己満足のためにこういう形にしたのだとは、もちろん口が裂けても言わないし、匂わせもしないスザクである。それに気付かないルルーシュは、夢ではないことを確かめるかのごとく、しばらくその小瓶を見つめ続けて。


「――ありがとう、スザク・・・すごく、嬉しい・・・」


まるで宝物を抱き締めるように胸元でぎゅっと小瓶を握り、切なくなるほど嬉しそうに笑った。


（ただの香水でも、こんなに喜ぶんだもんなぁ）


なら、もしも彼女が本当のことを知ったら、どんな反応をするんだろう。この香水の本当の意味を知ったら、どんな顔をするのだろう。少しだけそう考えて、スザクは胸中で密かに苦笑する。――どうせ、彼女に告げるつもりはないのだ。


「よかったね、姉さん！」
「お姉様、早速つけてみて下さい」
「あ、あぁ、そうだな・・・」


どうやら双子からも及第点が貰えたらしい。はしゃぐ姉弟妹を見つめながら、スザクはそっと服の上からポケットを撫でて、そこにある小さな膨らみを確認する。――ルルーシュに贈ったものとは、色違いの香水瓶。単品でも充分に楽しめるが、この香水、実際にはふたつでひとつのものとして作ったのだ。女性用の紫と男性用の緑。ふたつの香が混ざることでより深みの増すよう計算して調香したそれは、いわゆるカップルフレグランスというものだ。


（こればっかりは、市販のものを買ったら即バレるからなぁ・・・）


知識欲の深いルルーシュのことだ。市販の香水を贈れば絶対に調べるだろう。いずれ手を離そうと考えている身としては、あまりそういう恋人同士を連想するものは贈るべきではないと思う。別れるつもりで付き合っているというだけでも残酷なことなのだから。これ以上、ルルーシュの想いに不誠実なことはしたくなかった。・・・だからこれは、完璧なるスザクの自己満足だ。自分が、このポケットの中で眠っている香水を身に纏って彼女の隣に立つことはきっとないだろう。それでも構わないから、そういう形に残るものがひとつほしかった。――だから、自己満足。


「す、スザク・・・ど、どうだ？」


自分の作った香りに身を包み、不安と期待に瞳を揺らすルルーシュを眩しそうに見つめて、スザクはにっこりと微笑み。


「うん、やっぱりルルーシュにぴったりだ」

（だいすきだよ、ルルーシュ）


言えない言葉は、緑色の香水瓶と共にポケットの中へ仕舞い込んだ。


――――――
誰にもわからないようなところでデレるのが執事スザクの真骨頂（笑）

数年後ぐらいにルルーシュにバレて身悶えるぐらい恥ずかしい思いをすればいいと思います（え？）