貫ぬく残酷

Thanks for：選択式御題

わたしの執事、ぼくのお嬢様シリーズ。スザルル♀。


ハッピーバースデー、ルルーシュ！
え？　もう年末？　そんなことは書いている本人が一番よくわかってるから大丈夫！（涙）

誕生日なのにルルーシュの出番がなくてすみません・・・（滝汗）

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学校の近くにある家電量販店。学校帰りに便利なその店を、ロロはよく利用していたのだが、そこでスザクを見かけたのは初めてだった。しかも彼がいたのはパソコン売り場。スザクがパソコンに向かっている姿など滅多に見ないから、一瞬人違いかと思い、でも扱えることは知っていたし、実は結構詳しいのではないかというのもなんとなく察してはいたので――というより、彼が苦手なものというほうが、ロロには想像できない――なんとか納得する。カチカチとマウスを走らせる、ロロよりも大きな彼の手。家でパソコンをいじるのは専ら姉だったから、その光景がなんとなく不可思議だった。


「スザクさん？」
「・・・ロロ？」


ちょっとだけ戸惑ったまま彼の名前を呼べば、姉の恋人であり、自分達姉弟妹の保護者であり執事でもある男は、どこかきょとんとした表情で振り返った。そんな彼に近付きながら、手元を覗けば、やっぱりそこには最新式のパソコンがあって。


「パソコン、買うの？」
「あぁ、うん。ルルーシュの誕生日プレゼントにどうかな、って」
「・・・・・・は？」


のほほんとして答えるスザクに、ロロは耳を疑った。


「ルルーシュが使ってるパソコン、最近反応が鈍くなってきたって言ってたし、これを機に全部買い換えるのもありかなぁ、と思って。でも、どうせ贈るならスペック的にももうちょっと――」
「ちょ、ちょっと待ってスザクさんっ」
「ん？」
「・・・・・・本気？」


思わずまじまじとスザクの顔を見つめると、彼はぱちぱちと目を瞬かせてから、心底不思議そうに首を傾けて、頷いた。10歳以上も年上の男の顔が、ロロの目にひどくあどけなく映って、一瞬眩暈を覚えた。――あぁ、もう、どうしてくれようこの人。どこの世界に、恋人の誕生日プレゼントにわざわざパソコンをチョイスする人間がいるのか。


「・・・もっと違うものにしない？」
「え？　どうして？」


姉が可哀想になるのは大抵こういうときだ。ロロとナナリーにとって、スザクは兄であり父のような存在だし、彼自身もそんなふうに振舞っているように思う。だが、姉であるルルーシュは、そんな彼にずっと恋していた。片割れであるナナリーはそんな姉を一直線に応援していたけれど、ロロは少し違う。どちらかといえば姉の味方ではあったが、性別の違いからか、ナナリーほど無条件に応援はできなかった。ストレートに好意をぶつけてくる姉を、スザクはいつだって少し困ったように、でも満腔の愛情を込めて見守っていた。それに気付いたから、ロロは、ナナリーやルルーシュほど、スザクの行動にやきもきはしていない。――だけど、ロロだって姉のことが大好きなのだ。できることなら、ずっと笑っていてほしい。


「今、ルルーシュが一番ほしいもので間違いないと思うんだけどなぁ・・・」


ううーん、と唸るスザクに、ロロは小さく溜め息を洩らす。わかってるくせに、とは心の中で思うに留めて、その翡翠色の瞳に向けて、言った。


「ほしいものと贈られたいものはイコールじゃないよ」


特にスザクさんからのものは、とは繋げずに、一瞬だけ軽く目を瞠った男を見つめ続ける。彼は、やがて少しだけ困ったように微笑を零して、「うん、そうだね」と答えた。


（不器用な人だ）


きっと姉は、誕生日当日に新しいパソコンを手に入れるだろう。複雑そうな表情を浮かべる姉の姿を想像してロロはあからさまに溜め息を吐いた。この不器用な人も、たまには乙女心というものをしっかりと考慮に入れるべきだ。まずは外見にそぐわない強引さとパワーを持つ片割れに打診することから始めよう。幸いにも姉の誕生日のあとにはクリスマスが控えている。自分達ふたりがかりで攻めれば、この優しい兄のような人も陥落させられるだろう。


「――姉さん、喜んでくれるといいね」
「え？　う、うん・・・？」


にっこりと微笑んだロロを見て、スザクの顔が一瞬引き攣ったのは、見なかったことにしておいた。


――――――
決戦はクリスマス！

というわけで、クリスマス編に続きますー。
目標は、「たまにはスザクをデレさせよう」で（笑）
ちょっとスザクを素直にしてみるつもりですので、いつものスザクにやきもきさせられている皆様はお楽しみに！（でも過度の期待は厳禁ですよ！）